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弁護士

高 将太朗

AI・データの利用に関する契約ガイドライン


今年6月15日、経済産業省は「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を策定した。
近年の技術革新により、データの流通や利用、AI技術を利用したソフトウエアの開発・利用に関する期待が高まっている。
その一方で、これらに対する契約実務の蓄積が乏しいこと、あるいは当事者間の認識・理解のギャップがあることなどにより、契約の締結が進まないという課題があった。同ガイドラインはこれらの課題を解消するために策定された。
同ガイドラインは、データの流通や利用を対象とする契約編(データ編)とAI開発やAI利用を対象とする契約編(AI編)で構成されており、契約条項例、条項作成時の考慮要素、契約の幅広いオプション、具体的なユースケース集、海外のデータ移転規制(中国サイバー法、欧州GDPR)など国際取引への対応などが記載されている。
データは、保有するだけでは大きな価値はなく、利用する方法を開発することで価値が創出される。そのため、データの流通や利用を対象とする契約を締結する時点では、その価値が不明瞭なことが多い。
そこで契約に際しては同ガイドラインの契約条項例や具体的な寄与度などを考慮し、データの利用権限および発生した利益を適切に分配することが重要である。
同ガイドライン(データ編)では契約類型を三つ(データ提供型契約、データ創出型契約、データ共用型契約)に整理した上で、それぞれの法的性質、課題、モデル契約書案、ユースケースなどを記載している。
従来型のソフトウエア開発(ウオーターフォール型)では、あらかじめ全体の機能設計・要件定義を行ってから実装段階に移るため、契約締結時点で契約内容や責任範囲を明確に定めることが可能であった。しかし、AI技術の実用化の過程では、学習段階(学習用データセット生成段階、学習済みモデルの生成段階)と利用段階に分けられるため、契約締結時点では生成される学習済みモデルの性質・効果が不明瞭な場合が多いこと、学習済みモデルの性質・効果が学習用データセットによって左右されること、ノウハウの重要性が高いこと、生成物について再利用の需要が存在することなどの特徴が挙げられる。
このような特徴を考慮すると、従来型のソフトウエア開発とは異なり、探索的段階型の契約類型(開発段階ごとに契約締結)が適していると考えられる。
同ガイドライン(AI編)では、段階ごと(アセスメント段階、PoC段階、開発段階、追加学習段階)に論点やオプションを提示し、モデル契約書案、ベンダの責任範囲を限定する契約方法なども記載している。
同ガイドラインの対象は、契約に関するすべての者(契約担当者のみならず、事業部門、経営層、システム開発者などを含む)を幅広く想定されているので、一度、同省のホームページ(http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180615001/20180615001-1.pdf)で確認されるべきであろう。

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