POINT OF VIEW ポイントオブビュー

中小企業診断士

片山 祐姫

中小企業のイノベーションの取り組み方


中小製造業者の多くは、顧客企業の依頼に基づいて生産を行う受注生産型企業ではないだろうか。
受注生産のメリットはいろいろある。第一に、自社のリスクで商品企画しなくていい。
また自社リスクで生産した商品の販売先を探す必要もない。経営資源に制約のある中小製造業にとって、製造というコア業務に特化できる点は大きなアドバンテージだ。
その一方で短期的な効率のよさが長期的にマイナスとなる面もある。コア業務に特化できるということは、ほかの業務の経験を蓄積する機会を手放すということである。つまり商品企画や販路開拓のノウハウを持てなくなってしまうのだ。
また、受注生産型の場合、顧客企業の業績や方針に自社の経営が左右されることもある。顧客企業との力関係で無理を聞かざるを得ない場合もある。そうした企業の中には、本業は受注生産型であっても、自社商品開発を模索する企業もある。

ある中小の金属部品製造業も自社の技術を生かした商品開発に取り組んでいた。開発部署を設置して取り組んでいたが、なかなか製品化には至らなかった。
第1号の商品は、思わぬきっかけから実現した。思わぬきっかけとは、開発担当者の小学5年生の子どもの夏休みの工作である。

ドミノ倒しのドミノを一つずつ手で立てている様子をテレビで見た子どもが、紐でつながっていたら一度に立たせられると考えて、五つの木片を紐でつなげたおもちゃをつくった。これを父親である開発担当者が会社で提案したところ、「おもしろい」という話になり、商品化することになったのだ。
試行錯誤の末、「DOMIGO」(ドミゴ)という商品名で商品化し、「ひっぱるとたちあがる ふしぎなつみき」というキャッチコピーでネット販売を開始した。初めて商品が売れたのは販売開始から2カ月後。その年のクリスマスシーズンにはようやくまとまった数が売れるようになった。
会社は行政の支援のもとにドミゴシリーズの次の商品を開発した。世界中の10種類の異なる木でつくられた「DOMIGO world trees」である。

ドミゴという商品に手応えを感じたことから、大人も楽しめるこだわりを加味してプレゼント需要を狙ったのである。
今年の4月からは、「DOMIGO world trees」はパリのショールームでテスト販売されている。クールジャパン商品の海外販路開拓支援施策の対象商品として採択されたのだ。
この企業は金属部品製造業であるから、木製玩具は、本来は自社技術を活用した商品とはいえない。
しかし、商品生産には自社のものづくり技術を活用しているし、ドミゴの商品化や販路開拓に取り組む中で見出したニーズに対応する次の商品開発も進めている。

自社がそれまで手がけていなかった領域に取り組むことがノウハウの蓄積や次の展開につながることがある。そんな可能性を示唆してくれる事例である。

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