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中小企業診断士

片山祐姫

中小企業の事業継承


経営者といえば、何歳くらいの人をイメージするだろうか?
去年の中小企業白書に、中小企業の経営者の年齢分布のピークがシフトしていることが記されている。1995年に47歳であったのが、2015年には66歳である。20年経過して、19歳シフトしているということは、経営者交代が遅々として進んでないということなのだろう。
日本の全企業の99・7%は中小企業である。従業員数でみると、69・7%が中小企業で働いている。
中小企業が日本の経済や雇用を支える基盤であることが数字から確認できる。事業承継は、中小企業の存続に関わる重要な課題である。

事業承継は、経営者の親族が承継する親族内承継、従業員などへの承継、M&Aの3つに大別される。昔は親族内承継が一般的であったが、近年は従業員などへの承継やM&Aが増加傾向にあるようである。
今回はこの事業承継でのユニークな事例をご紹介する。登場するのは、大阪の従業員11人の中小企業である。
この会社は、37年前に前社長が創業した会社である。
事業内容は、光触媒半導体「酸化チタン」を活用した歯ブラシの企画開発・販売である。創業者は、かつての勤務先で、酸化チタンを活用した歯ブラシの開発を提案したものの、採用されなかった。そこで、独立して自分で事業を興すことを決意したのである。
開発した歯ブラシは、光触媒反応を利用して、歯垢を除去しやすくするもので、発売以降、その効果の高さから、多くのファンを獲得することができた。
商品名を「ソラデー」という。

前社長のお嬢さんである、現社長が事業承継したのは、9年前である。その前後の経緯が興味深い。
まず現社長が学校卒業後、働いていたのは、畑違いの飲食店である。店長に抜擢され、20人以上のスタッフを率いてはいたものの、普通の会社での仕事の経験は、まったくなかった。
飲食店退社後、父の会社に入社し、営業事務と経理に携わり、3年が経過した頃に社長である父が病気になった。
このときの前社長の決断がすごい。入社してまだ3年のお嬢さんを社長に指名し、すぐに社長交代を実施した。
社長職を受けたお嬢さんの覚悟もすごいし、また社長就任後の経営手腕がすばらしい。経費の抜本的な見直しや全員参加の経営方針を掲げ、経営改革を推進していった。
通常は、後継者教育には、数年から10年程度を要する。社長の大病という緊急事態があったものの、なぜ異例のスピードでの事業承継が実現できたのであろうか。
その一つの答えが「ソラデーを一日でも早く、一人でも多くの人に使ってもらいたい」という現社長の言葉にある。自社商品の品質への絶対的な自信と信頼が、事業存続への強い信念になったのではないだろうか。
現在は、新商品「N4」の展開に注力されている。今後の展開がますます楽しみな企業である。

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