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弁護士

高 将太朗

3つのeで進める裁判手続きのIT化


裁判手続きのIT化は欧米やシンガポール・韓国などで普及・定着しつつある。日本では、ようやく裁判手続きのIT化についての検討が始まった段階だ。裁判手続きのIT化は裁判をより利用しやすいものへと変えていくために必要であり、諸外国に遅れぬよう実現していくべきである。


昨年6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」において裁判手続きのIT化を推進する方策についての検討を行うことが挙げられ、これを受けて同年10月30日に内閣官房に「裁判手続等のIT化検討会(以下「検討会」)」が発足。今年3月31日に検討会から「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ―『3つのe』の実現にむけて―」が公表された。ここでいう「3つのe」とはe提出(e-Filing)、e事件管理(e-Case Management)、e法廷(e-Court)である。
e提出(e-Filing)とは訴状や答弁書などの紙媒体の事件記録を持参・郵送・FAX送信するという従来の取り扱いに変えて、新たに開発する裁判所のシステムにより24時間365日利用可能な電子情報によるオンライン提出を可能とする仕組みである。
e事件管理(e-Case Management)とは裁判所が管理する事件記録や事件情報(裁判期日の調整や証人尋問の結果、判決言い渡し期日の確認など)に当事者本人や代理人弁護士が随時かつ容易にオンラインでアクセスすることを可能とする仕組みである。
e法廷(e-Court)とは手続き全体を通じて当事者の一方、または双方によるウェブ会議などの活用により当事者の出頭の負担を軽減する仕組みである。実務では第1回口頭弁論期日に被告が欠席し、審理が進まないことも多いが、今後はウェブ会議などによる実質的な審理を行うこと、証人などが裁判所以外の場所に所在する場合にウェブ会議などによる尋問の実施を行うことが挙げられている。


しかし、これら裁判手続きのIT化については、検討すべき課題もある。その一例としてIT化への対応が難しい利用者へのサポートである。上記IT化は利用者がITを活用できることが前提となっているが、中にはIT環境が整わず利用できない者も想定すべきである。各地域の弁護士会、役所などに裁判を希望する者が自由に利用できるIT環境(紙の電子化、オンライン提出代行など)を整えた上で、これに対応する弁護士によるIT面でのサポートが必要である。また情報セキュリティ対策も必須である。セキュリティ水準および対策は訴訟の手続き段階、情報の内容・性格などを考慮して実務的に検討していく必要があり、民間とのサービス連携・技術連携も視野に入れて検討することが考えられる。
裁判手続きのIT化は今後、関連法令の改正、システム構築、実務法曹による実務的検討・検証などの環境整備を経た後に実現されることになる。検討会によれば、まずは現行法下で実現可能な争点整理でのウェブ会議などの活用(e法廷の一環)について2019年度から特定庁で試行などを行うことを目指している。

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