POINT OF VIEW ポイントオブビュー

彫刻家

川崎 廣進

なんばウォーク、クジラモニュメント

1993年、あるデザイン会社からクジラモニュメントを計画しているから来てくれないかとの話があった。
その会社に訪問するとクジラが水面から45度の角度で飛び上がるスケッチを見せられた。
私は「このデザインは、樹脂製ならできますが、石材でつくることは無理です。なぜなら『なんばウオーク』の地下商店街で彫刻本体を重くすると地震や衝撃で前に倒れる心配があります。水面からクジラが飛び出した形を希望でしたら、クジラ腹部分に波をつくり、支えにしたらいかがですか。ほかの方法としては立像にして胴体の総重量を垂直に下ろすのが安全です」と提案した。

そんなこんなで話は二転三転したが、先方のデザイン会社によると、昔は、なんばあたりまで海であり、大阪湾にセミクジラが入ってきたそうだ。だからセミクジラをぜひつくりたいというのが希望だった。
私は、クジラのことをよく知らなかった。和歌山県太地町クジラ博物館にセミクジラの剥製があると聞き、デッサンをしに行くことにした。だいたいデザインと素材を決定しないと見積もりもできない。
博物館に入ると、セミクジラの剥製が天井からつってあった。あまりの大きさに驚いた。博物館の3階に上がるとクジラの周囲に通路がつくってあった。「本物はこんな大きいのか?」と感心した。長さ10メートルはあるだろう。頭から尻尾まで真ん中の胴体が邪魔をして全長が見えない。「さすがクジラの王様だ」。おおまかな姿だけ写真に撮って部分スケッチのみして帰った。

そして、石材モニュメントに決定し、設計図と重量計算に入った。重量を考え、垂直に立てることにした。二匹のクジラのデザインで話が決定し、一匹は垂直に海中から飛び出した形。もう一匹は海中に潜って尻尾を見せた形だ。石材はアフリカ産の黒御影を使うことにした。大きな石がとれるし質がいいからだ。さっそく見積もりを取った。原石は40日間で日本の名古屋港に着くと返事が来た。原石から完成までの見積もりをとるのにずいぶん苦労した。運搬、加工費、現地(地下街なんばウオーク)組み立てなど計り知れない。値段交渉でもかなり時間を要した。
名古屋港に南アフリカから原石が着いた。ところで、大阪で仕事をするのになんで名古屋なのか。
現場に運びやすい大阪港に着けるのが最適と私は考えていたが、重い石材を降ろす機械がないとのことだった。岐阜県には日本一の石材工場や商社が集まっているので、名古屋港には重くて大きな石材を船上げできる機械が備わっていた。
到着した重たい2個の原石を、大きなトラックに乗せて南大阪に運んだ。借りていた空き地にクレーン車を据え、荷下ろしを始めた。一度下ろしてしまうと簡単に動かせないので5、6人の彫刻家や石割職人が作業しやすい間隔を計算して原石を下ろした。
いよいよクジラ制作着手だ。次回に制作の苦労、思い出を述べていきたい。

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