POINT OF VIEW ポイントオブビュー

第一生命経済研究所首席エコノミスト

熊野英生

シニアはネット消費を好まないってホント?

年代別に、インターネットで通販などをした経験を尋ねると、シニアとそれ以外で大きな差がみられる。65歳以上になると、通販利用の割合は加齢とともに低下する。「シニアはネットで消費しない」という通念ができるわけだ。
しかし、データを細かく分析すると、品目によってシニアが率先して消費する分野があるという事実が浮かび上がってくる。データは、総務省「家計消費状況調査」(2020年)の年代別消費額である。そこでは、ネット消費のうち、65歳以上の消費割合が高い品目を調べることができる。どんな品目が上位にくるかというと、トップ4は①健康食品(65歳シェア35・2%)、②贈答品(33・2%)、③医薬品(市販薬、29・0%)、④食料品(26・8%)となる。これらは全消費に占める65歳以上消費の割合(21・8%)を大きく上回っている。

注目したいのは、1位の健康食品である。ここでの健康食品とは、サプリンメントを含む。シニアが健康志向が強いことは、説明を要しないだろう。「ほしい」と思う分野では、シニアでもネット購入を躊躇しないのだ。
もともとサプリメントや健康食品は、商品性があまりに多様化して、店頭では選びにくい。だから、事前に自分でしっかりと調べてから購入する。ネット検索はそのときの最高の武器だ。健康食品については、「知りたい」という強い動機が、シニアのネット・アレルギーを上回っている。
おもしろいのは、ネットで健康食品を購入しているのは、65歳以上よりも若い55―64歳に集中することである。この年齢層が市場の半分(52・4%)のシェアを占めている。75歳以上のシニアになると、ネットで健康食品は買わなくなる。
ここには、世代の壁があるかもしれない。現在75歳の人は、20年前の2000年は55歳だった。この頃には、仕事でインターネットを使っていた。年齢が上がって1995年に55歳だった人たちは、ネットをあまり使わない世代になるのかもしれない。

話をシニアのネット消費のランキングに戻すと、2位は贈答品だ。お世話になった人への贈り物や返礼品に悩んだ経験のある人は少なくないだろう。思い入れがあるから、念入りに探そうと思う。そのとき、ネット通販のサイト内を探し回ることは、足で情報を集めるよりも労力がかからない。贈答品探しの情報収集は、ネットになじむ作業だ。シニアであっても、情報収集に手間のかかることは、ネットで行うということだろう。
3位は医薬品だ。ネットで買える医薬品は、医師や薬剤師の指導を受けないで買える市販薬(一般用医薬品)である。これも、店頭で買えることもできるが、やはり情報がほしいので、ネットで検索してから調べて購入する人が多いのだろう。
今後、ネットを仕事で使っていた年代が75歳以上になると、彼らはネットで健康食品や医薬品を買うことが増えるだろう。あと10年くらいすれば、シニアはネットで買い物をしないと指摘されることもなくなるはずだ。

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