POINT OF VIEW ポイントオブビュー

中小企業診断士

足立 早恵子

ジャニーズ事務所の経営理念

日本中でジャニーズという芸能事務所の存在を知らない人は少ないだろう。しかし、その「株式会社ジャニーズ事務所」が、実は資本金1000万円、従業員数130名という同族経営の中小企業であることを知っている人も少ないのではないだろうか。おそらく、同社は日本一有名な中小企業である。
去る9月4日、東京ドームで7月に亡くなったジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長のお別れ会が営まれた。会は午前と午後に分けられ、午前中は所縁の人々が集う関係者の部、午後は招待状がなくても参列できる一般の部とされた。その一般の部だが、全国各地からなんと約9万人も集まったと報道されている。筆者も思うところがあり参列させていただいたのだが、老若男女問わずさまざまな人々がそれぞれにジャニー氏への感謝の意を表し、温かい空気に包まれた。

世間では同社をブラック企業と思っている人も多いかもしれない。しかし、それは視聴率や売り上げを稼げる人気タレントを多く抱えていることに対する同業者のやっかみに、営利主義の週刊誌などが乗っておもしろおかしく報じているゆえだろう。さまざまな情報を丹念に見ていくと、同社はブラックどころか、むしろ従業員を「家族」として扱う古きよき日本企業であることがわかる。
かつて、わが国では農耕社会的な価値観を背景として企業経営も経営者と従業員が親子のように協力し合うことで共存共栄を図る「家族主義的経営」が主流だった。パナソニックの創始者松下幸之助氏や出光興産の創始者出光佐三氏などもそうした姿勢を貫き、苦境にあっても従業員を家族とし、人員削減を行わなかったことはよく知られている。こうした近代の日本企業では若い従業員が経営者の自宅などで生活し、経営者が教育面を含めて物心ともに面倒を見るということが当たり前に行われていたわけだが、欧米式の合理的経営が主流になった現在でもそれを続けているのがジャニーズ事務所なのだ。

例えば「合宿所」と呼ばれる寮を用意し、デビュー前の若いタレント候補の面倒を見ていた。アクロバットを習得させるための体操教室の月謝を自らが負担して通わせるなどのサポートを熱心に行っていたという。
こうした姿勢は、ジャニー氏の葬儀を社葬ではなく「家族葬」としたことからも伺える。時代が進み、日本社会における価値観が大きく変化しても、「古きよき家族主義的経営を堅持しながら大きく発展してきた中小企業」、それがジャニーズ事務所だ。お別れ会、午前中に行われた会社関係者やゆかりの人々を招いた関係者の部には現役の所属タレント154名のほか、かつて所属していたタレントや芸能関係者が多数訪れ、参列者は3500人にも上った。ジャニー氏が事務所を辞めた人々からも深く愛されていることを改めて認識させられた。
おそらく同社は日本の中小企業の中ではトップクラスの売上高を誇っている。そんなジャニーズの最大の強みはその家族主義的経営にあるのではないかと改めて実感する機会となった。

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