RECENT ARTICLES 記事紹介

文春新書 880円+税

著者に聞く

『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』(熊野英生著)

2019年2月18日(月) 3359号

「大企業では、各社員の仕事が分断されている。『君の担当はこれだ』といわれて、あとは野となれ山となれで放置されている人材も少なくない。このままだと、10年後には非常にまずい状態になる」。
同書の著者で、小紙でコラムを担当していただいている熊野英生氏はこう話す。
日本企業の生産性低下が指摘されて久しい。その原因を解析する議論も盛んで、関連書籍も多数出版されている。ただ、こうした議論の多くはマクロ経済の視点で行われており、総論に踏み込んでも、各論には踏み込まない。
同書のポイントは、実際の労働現場をベースに課題を浮き彫りにし、その上で、解決策を模索している。いわば各論に踏み込んだ内容になっている点だ。
同書によると、一人でプロジェクトを切り盛りしている役職クラスも増えているという。いわゆるワンオペである。同書は、こうしたオンオペでさらなる生産性向上、働き方改革を実現するのは不可能だと喝破する。
「企業の生産性は全体の機能やビジネスモデルが変わらなければ向上しない。個人の生産性だけを上げても集団の生産性向上にはつながらない」(熊野氏)。
また最近の会社員は自社への忠誠心が低いといわれている。確かに、いまでは欧米優良企業の社員のほうが上司や組織に対する忠誠心が高いように見える。
熊野氏は、その背景に社員教育の不足があるとみる。
「社内の教育体制が崩壊しているのは致命的だ。成果主義が浸透し、現場が近視眼的になっている。つまり、社員教育よりも、いまの仕事を回すことに力が注がれ、『新人教育は面倒だ。勝手にやれ』という風潮がはびこってしまった。これでは一人前のビジネスマンは育たないし、生産性が向上するわけがない」。
忠誠心が低いと、単に会社のルールに従うだけで、自己研鑽や利他的行為が薄れる。その結果、新たな発想を生み出す気力もうせ、外部から学ぶという姿勢もなくなる。さらに互いの能力を伸ばし合うという切磋琢磨の精神もなくなる。なるほど、これでは生産性は伸びない。
日本企業がハツラツと成長していた頃は、いろいろな施策を欧米企業から貪欲に学んでいた。しかし、ここ最近は、そうした雰囲気がなくなっている。欧米企業や中国企業のスピーディな対応を学ぼうとか、優れたサービスを評価し、取り入れるといった姿勢がとんと見られなくなった。この辺にも生産性が向上しない要因がありそうだ。
そんな熊野氏は、現在、自ら進んで若い社員の指導を買って出ているという。
「私が若い社員を教育しないと、若い社員は絶対に自分の部下を教育しない。その結果、代々継承されてきた人的教育のバトンが途切れてしまう。これが途切れると二度と元には戻らない」。
同書では、その解決策としての管理のあり方に言及。管理というのは、人を育て、組織を大きくすることだと強調する。
「管理職の身を守る、組織を守ることは管理とは言わない。こうした勘違いを払拭し、管理のあり方を改革することが企業の生産性を上げるトリガーになるのではないか」と熊野氏は述べる。

ページトップへ

POINT OF VIEW ポイントオブビュー

採用情報

現在はありません。

お問い合わせ

TEL:03-5937-5480
FAX:03-5937-5476
Mail: info@denkeishimbun.co.jp

facebook