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青山店と船橋店の比較

DXでリアル店舗が売上増

三陽商会

2019年6月17日(月) 3374号

ファッションカンパニーの老舗である三陽商会は自社事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に力を入れており、現在は店舗へのAI導入に傾注。デジタルトランスフォーメーション推進にあたりABEJAとの連携を強めている。
国内アパレル市場は2000年に10兆8000億円ほどの規模を誇ったが、現在は9兆4000億円で、1・4兆円ほど縮小している。下落傾向は今後も続く見通しだ。三陽商会の主な販路は百貨店で全体の65%。その次に大きいのが量販店だが、どちらも下落傾向にある。一方、eコマースは年率10%で伸びている。
同社執行役員経営統括本部副本部長の慎正宗氏は「ファッションの世界におけるeコマースの比率は25%くらいまで伸びる。現状の日本市場では10%だが、この数年で20%まで伸長するとみている」と話す。
  
顧客の購買行動も変化している。その背景にあるのはタッチポイントの多様化だ。リアル店舗・ネットを問わずさまざまなタッチポイントがある中で、購買行動に最も大きな影響を与えるのは、実はいまもリアル店舗での体験だ。これは各国共通の事象だという。
三陽商会の実績では、リアル店舗とeコマースの両方で購買している層は7%だが、購入金額でみると18%に上る。
この点について慎氏は「リアル店舗とeコマースの両方を利用する顧客は、片方のチャネルしか使わない層に比べて、3倍近くの購入をしている。そのため両方を利用する層をいかに増やすかがポイントになり、当社のデジタルトランスフォーメーションにおける一丁目一番地の施策になっている」と言及する。
デジタルトランスフォーメーションでeコマース率を上げるのはさほど難しいことではない。それよりも重要なのは、顧客との接点を拡大することだ。同社では、とくにリアル店舗での顧客接点を重視。店舗で実際に何が起きているのかを可視化することに力点を置いている。
eコマースでは、データによりすべて見える化できる。顧客がどのサイトから入ってきて、どのくら滞留して、どのページを見たか、どこで離脱したのか、何をどのくらい購入したのかなど、すべて見える。
同社のデジタルトランスフォーメーションのミソは、eコマースで実現している見える化を、リアル店舗にも反映させることだ。
「いままでまったく見えなった顧客の属性、入店状況、滞在時間、どのような接客を受けたのか、何を試着したのか、実際に購入したのかどうかなど店舗での動きをすべて見える化する。こうしたデータを分析し、販売活動につなげていく」(慎氏)。
実店舗でのトライアルでは、動線トラヒックをはじめ、入店者数、入店率、接客率、試着率、購入率が把握でき、こうしたデータに基づき売り場のレイアウトを定期的に改善していった。その結果として、店全体の売り上げが1・7倍に増えた。
  
また同社の青山店と船橋店を比較したことで、接客における新たな知見も取得できた。
ある一日を見ると、青山店には78人が来店。船橋店は249人だった。一方、購入は青山店が12件、船橋店は8件。接客から購入に至るコンバージョンは青山店が67%、船橋店は73%だった。一方、接客率は青山店が23%に対して船橋店は4%だった。
なぜこのような差が出たのか。それは店員の数が違うからだ。青山店の店員は8名で、船橋店は3名しかない。店舗の運営は売り上げに対して人件費15%に抑えないと利益が出ない。そのため売り上げに合わせて店員数を決めている。しかし、この検証によれば、船橋店に店員10名を配置すれば、接客率が3倍になって、売り上げが伸びるという考え方もできる。
「実際に、店員10名を配置したところ、接客率が2・4倍向上し、購入率も2倍になった。売り上げも1・6倍。いままでわからなかったことが見える化することで、新たなアクションが打てるようになった」と慎氏は述べる。

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